「結城紬」の始まりは、平安時代に貢物として朝廷に上納されていた絁(あしぎぬ)と言われる“手でつむいだ太糸の絹織物(=あしき絹)”とされており、現在も日本各地に残る様々な紬織物の原形になっている。繭を薄く引き伸ばした真綿糸で織られる「結城紬」は、柔らかな風合いとその丈夫さが特徴。鎌倉時代から江戸時代まで武家に好まれて着用されていた。また結城紬はかの有名な「鶴の恩返し」のモデルになった織物でもある。
その昔、結城紬は地機(いざり機)と呼ばれる織機で織られていたため、織り進むのは1日わずか数センチという過酷な手作業だった。その過酷さは時に「命を縮める」と言われるほどの体力を要するため、情熱を注がれて織られた結城紬はまるで織り手の分身のような存在となっていった。そんな古の想いと技術が、今も織物を通して受け継がれている。